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J-REITの自社株買いは効果あるのか?②

J-REITの自社株買いは効果あるのの続き。

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もはや常識ではあるが、不動産の鑑定評価は絶対的な数字ではない。難しい試験を通った鑑定士さんが算出した価格でかなり信頼できる数字に見えるが、投資においては致命的なほどのブレる数字である。

なんで?

不動産の鑑定評価額と株価から逆算される不動産価格のどちらが正しいのか。裁判所関連の公的な仕事も請け負う鑑定士が算定する鑑定評価は絶対的な数値ではないのか。

同じ情報を使って、ちゃんと所定の手続きに沿って計算すれば誰でも±3%くらいに収まるんじゃないの?

違います。

仮に100人が同じ不動産を鑑定した場合、鑑定士は自分の算定した価格が平均の±20%のレンジに収まっていればまあ合格点と言われる。それくらいのバラつきは誤差の範囲。

なぜなら、不動産の算定手法は色々なものがある。極端な話、土地+建物(減価償却費考慮後)の価格より上で、丸の内の賃料より低ければ、あとは説明さえつけば何でもOKと言いきっても過言ではない。J-REITの被合併会社の不動産価格を見れば実例には事欠かない。合併前後でがっつり下落している。

また、不動産の鑑定価格とはある特定の時点の市場価格であって、半年経って前提条件が大きく変われば価格も当然のように大きく変わる。実際にテナントが変わって賃料水準が変動することもあれば、「市場」という見えない秩序を織り込むこともある。郷に入りてはなんちゃらで、みんなそんなものだと思っている。

しかも、J-REITは決算月の一ヵ月半後に決算短信をリリースするので、価格の鮮度がちょっと悪いし、継続鑑定と言う投資家にとってなんの助けにならない技もある。ゆえに鑑定価格をベースにしてP/NAV倍率は割安だ!というにはちょっと心もとない数字だというのが本音。

以上のことは、J-REITの初歩の初歩であり、少なくともJ-REITの決算短信を見て、P/NAV倍率を算定して仕事をした気になっている機関投資家はいない(と信じたい)。

もっと色々と言いたいことはあるのだが、この点だけでも日経さんの記事を読んで「おいおい」と思ったのは事実。

では、J-REITの自社株買い(正式には自己投資口買いというらしい)はどんな意味があるのか。次回に続きます。

J-REIT 分析 2012年1月22日

新宿の京王百貨店で獺祭ゲット。磨き2割3分と3割9分もあったが、悩んだ末(お金の面で…)温め酒と寒造早槽を選択。25日まで京王で試飲宣言販売しているとのこと。有名どころがここまで宣伝すると競争は激しくなりますなあ。。。ちなみに日経土曜日版のショウガ特集で一位だった菊正酒造のショウガ鍋は手に入らなかったけどな!!

で、週末恒例となる予定のJ-REITランキング。1位~10位まで。34社もランキングできないので、他はコメントのみ。(配当利回り/時価総額)

1位 :3269 アドバンス・レジデンス投資法人 6.41% 137,690
伊藤忠系の住宅REIT。多額の負ののれんで、もはや株というよりも債券と言っても過言じゃない分配金の安定。PO中なので底値狙いたい

2位 :8984 大和ハウス・レジデンシャル投資法人 6.69% 76,736
大和ハウス系の住宅REIT。負ののれんもあるし、今のところスポンサーのやる気も十分。5年くらい年間配当金32,000円は固い。

3位 :8986 日本賃貸住宅投資法人 6.73% 45,447
極端な話、そこそこの物件であれば何とかなるのが住宅の良いところ。金利コストの改善も期待。

4位 :8956 プレミア投資法人 8.04% 49,607
NTTがメインスポンサーとなったオフィス・住宅の複合REIT。しょっぱいオフィスが重荷でNTTがどうやって挽回するか。住宅は業界No.1のKEN(スポンサーでもある)が担当。

5位 :8981 ジャパン・ホテル・アンド・リゾート投資法人 6.90% 18,416
日本ホテルファンドと合併を発表。ホテルも競争激しいが割安だと思う。

6位 :8985 日本ホテルファンド投資法人 7.47% 11,496
ジャパン・ホテル・アンド・リゾートと合併予定。トラブル続きだったので、これで一段落か。

7位 :8951 日本ビルファンド投資法人 4.53% 385,281
安定感のある三井不動産系オフィスREIT。オペレーション力はピカイチ。公募増資直後なのでちょっと値が重い時期があるか。狙い時。

8位 :8960 ユナイテッド・アーバン投資法人 6.62% 174,791
日コマを吸収した丸紅系の総合型REIT。ほんと何でもありで、まさに商社系。負ののれんがあるので今後3年は分配金5500円極めて固い。

9位 :3226 日本アコモデーションファンド投資法人 5.52% 99,497
三井不動産系の住宅REIT。月初4営業日ほどで前月末の稼働率をリリースする拘りはかなりすごい。安定感あり。利回り6%欲しい。

10位 :3240 野村不動産レジデンシャル投資法人 7.10% 51,394
野村不動産系の住宅REIT。公募増資で調整した株価を戻し中。日本アコモデーションファンドには勝てない運命。

以下、銘柄コード順。こういう時、ブログは面倒臭い。。

8952 ジャパンリアルエステイト投資法人 4.87% 315,534
建物は立派なんだが…の三菱地所系オフィスREIT。一棟くらい丸の内のビル入らないものか。2012年3月までに公募増資予定なので要注意。

8953 日本リテールファンド投資法人 6.52% 211,522
三菱商事系の商業REIT。GMS(イオンなどの郊外型商業施設)も都心型商業も不安。誰も買わない物件を拾う不思議なREIT。

8954 オリックス不動産投資法人 7.05% 92,014
オリックス系のオフィス中心(大規模ではないが中小型でもない)で、商業、物流、住宅も保有する総合型REIT。それなりに上手くやってると思うが、前回のPOが市場から総スカン。

8955 日本プライムリアルティ投資法人 6.57% 126,198
東京建物系のオフィスREITと一般的に言われるが、商業も結構多い。親会社苦しい時だが、投資口価格が安い時期にPOはしないと言ってるらしい。

8957 東急リアル・エステート投資法人 5.99% 65,550
東急電鉄系のオフィス、商業の複合REIT。良い物件だけに目を奪われるとろくなことにならない。2011年になってようやく売り込まれたREIT。

8958 グローバル・ワン不動産投資法人 5.15% 48,935
近・新・大を掲げる(ほぼ)独立系オフィスREIT。最近、森ビルと仲が良いのでくっついても不思議じゃない。

8959 野村不動産オフィスファンド投資法人 6.12% 123,727
野村不動産系のオフィスREIT。財閥系デベを追いかける業界2番手だが、1番との差は大きい。JALビル埋まって一息。

8961 森トラスト総合リート投資法人 6.14% 150,524
(良い意味で)孤高のデベ、森トラストのオフィス中心のREIT。汐留ビルはJ-REITで一番のビル。契約が固すぎて配当金は上昇しない。

8963 インヴィンシブル投資法人 6.42% 8,400
住居中心の総合型REIT、オフィス、シニア、商業も。…ちゃんと運用してくれ頼むから。あと変なファイナンスは勘弁。

8964 フロンティア不動産投資法人 6.03% 118,340
三井不動産系の商業REIT。スポンサーから一番可愛がってもらってる気がする。親会社の決算に合わせてもうすぐ公募増資かも。

8966 平和不動産リート投資法人 8.21% 26,270
平和不動産系のオフィス・住宅の複合REIT。モルガンスタンレー系ファンドの売却がネック。あと、平和不動産に何が出来るのか、あまり期待持てず。

8967 日本ロジスティクスファンド投資法人 5.26% 95,904
三井物産系の物流専業REIT。低LTVと高い配当利回り。ダイナミズムに欠けるが安心感あり。公募増資で安くなったら買いたい銘柄No.1

8968 福岡リート投資法人 6.46% 61,525
福岡の大企業(+日本政策投資銀行)のほとんどがスポンサーの総合型REIT。福岡地盤で格付AAの企業って5社もないらしい。

8972 ケネディクス不動産投資法人 8.39% 63,528 スポンサーであるケネディクスよりも信頼されていた時期もあったが、今や両方とも銀行の言いなりなのか。いっぱいいっぱいの感がある中小型オフィスREIT。

8973 積水ハウス・SI 投資法人 7.04% 33,175 積水ハウス系の住宅REITだが、商業のシェアも高い(これ以上は増やさないらしい)。スポンサーのバックアップでどこまで商業の影響を薄められるか。

8975 いちご不動産投資法人 7.60% 25,495 良く分からない、いちごグループのオフィス中心の複合REIT。負ののれん+金利コスト低減で期待を持てるREIT。

8976 大和証券オフィス投資法人 6.38% 63,288
大和証券に何ができるのか良く分からないオフィス専業REIT。良い物もあるが、厳しい中小型オフィスも多い。

8977 阪急リート投資法人 7.41% 28,353
競争激しいが、大阪の商業施設は良い物持ってる。なんで東京のホテル買っちゃうのか。

8979 スターツプロシード投資法人 7.52% 10,808
スターツって良い企業だと思うが如何せん華がない。個人投資家のシェアが高い異色の住宅専業REIT。

8982 トップリート投資法人 6.89% 53,785
スポンサーは立派だが、何をやってくれるのか良く分からないオフィス中心のREIT。晴海トリトンは厳しい。

8987 ジャパンエクセレント投資法人 7.96% 56,878
興和不動産系のオフィスREIT。騙し騙しやってきたが、そろそろ限界も見える。

3227 MIDリート投資法人 8.27% 32,997
関西電力系のオフィス中心のREIT。大阪の京橋のオフィスが大きな不安。動き遅い。

3234 森ヒルズリート投資法人 6.65% 59,153
森ビル系の総合型REIT。やってることは間違いないのだが、王道から外れており、あまり評判よくない。

3249 産業ファンド投資法人 6.40% 35,955
三菱商事系の物流・インフラ系リート。最近はもっぱら物流ばかり取得。前回の公募増資から1年。そろそろかも。

サンケイビルがTOBで爆騰!割安なJ-REITにも資金流入を期待

しません。

もう期待するのもうんざりだよ!
立飛企業、新立川航空機の時もそうだけど類似のニュースに何回裏切られてきたのか!!

サンケイビルの実質PBR(不動産の簿価ではなく時価で評価したPBR)は0.2倍弱。TOB価格は2.5倍のプレミアムを乗せるということで、TOBを仕掛けたフジは実質PBR0.5倍が妥当な線と判断したことになる。

ちなみに実質PBRは、(「会社の保有資産の時価評価(サンケイビルの大半は不動産)」-「負債」)/株価なので、J-REITで使われるP/NAV倍率とほとんど同じ考え方。

なので、不動産の時価=株価であれば実質PBRは1倍という計算になるが、「株主が納得して、邪魔(買収競争参加者)が入らない」価格は実質PBR0.5倍だなと判断したのがここまでの事実。

ファンドがさらにTOBしてきたり、他の主要株主から物言いが付けば価格は上乗せされるかもしれないが、中堅不動産会社のPBRは0.5倍前後、財閥系でも0.7倍前後の現状からするとすんなり勝負あり、むしろ株主にとっては僥倖と言っても過言ではない。

もちろん実質PBR0.5倍でも割安だ、上場させておくのは勿体ないと判断したからこそTOBするわけだが、新興企業と異なり、不動産という物の価値がはっきりしているはずの企業が割安なまま退場していくのは、悲しいけれど事実なのよね。

もちろんPBR1倍が正しい姿と主張する気はさらさらなく、マーケットで付いた価格が正しい価格。割安なものはずっと割安という変えがたい事実を基に、J-REITを運用する側と投資家は如何に業界を存続させることができるのか。

割安に放置されるならもっと割安で買えば良い、ただそれだけのことではあるのだけども。

【先に結論だけ書きます】J-REITの自社株買いは効果あるのか?日経はあるって言うけど・・・

何か思いのほか長くなりそうなので、まず結論というか個人的な考えを書こうと思う。一言で表せば「短期的には上がるので叩き売れ!上手くいってもどうせ公募増資するんだから深追いするな!」に尽きる。

以下、詳細。

①J-REITの自社株買いのアナウンス効果はそれなりに期待できる。マーケットが負ののれんのメリットを理解するのに恐ろしく時間が必要だったが、自社株買いは直感的に分りやすい。どのような形で織り込みにいくかはその時々の市況だが、短期的に10%くらいは上昇すると思う。

②自社株買いの原資は、物件売却資金と減価償却費がまず想定される。但し、物件売却で発生する譲渡損益は配当金を直撃する。ひょっとしたら自社株買いと譲渡益の内部留保は同時に認められるかもしれない。譲渡損を出すしかない場合はどうするのか、減資差益でも計上するのかしらん。でも、自社株買い→減資差益計上→物件売却→売却損発生→減資差益と売却損を相殺の順番になるだろうし、半年決算では同時にやるの難しそうだなあ。また、物件売却資金が負債返済に回されないと借入比率も上昇してしまう。

一方、減価償却費は毎期発生するので自社株買いの減資としては分りやすい。例えば大和証券オフィス(DAO)だと時価総額641億円に対し、直近の減価償却費用は半年で13.5億円。すべて使えば半年で2%の自社株買いに該当する。これは出来高の薄いDAOの場合、一カ月分の出来高と同じ金額となる。

③重要なのは物件売却も減価償却費の充当も将来のCFを取り崩しているのと同義だということ。物件売却により賃貸収益は減少するので、当たり前だが一口あたりの配当原資も減少する。また、減価償却費は本来であれば資本的支出として物件のバリューアップや負債の返済に充当されるものであり、長い目で見れば重要な配当原資である。

④よって、自社株買いが一口あたりの配当金/純資産を増加させるかはケースバイケース。ベストシナリオはCF水準をなるべく維持したまま自社株買いして、投資口価格を上昇させて、その水準で公募増資して、良い物件を買って「質の良い」配当金を生み出すこと。

⑤最悪のシナリオはスポンサーに第三者割当増資→自社株買い。これは既存投資主の希薄化のあとに行われるので既存投資主にはメリットゼロ。これだったらTOBしてくれと思う。

個人的にはアメリカやオーストラリアのREITのように開発してほしい。デベロッパーは嫌がるだろうけど。NBFあたりがMBOすれば面白い。

NBFの値決めは明日

最後まで試合見てないが、ひょとしてパッカーズ負けたのか?NFLのサイトを見るのはペイトリオッツ戦まで我慢我慢。ひかりTVで今からキックオフ、たのしみすぐる。

NBFは結局、12月の配当落ち後の安値614,000円まで売り込まれることなく、値決め日を迎えることになった。

11時13分時点では為替も安定している、というか各国の入札が極めて堅調なので、波乱要因は少ない。ギリシャが3/20にデフォルトするかもというコメントが流れたが、ここは実際にならないとCDSを含めたエクスポージャーは見えてこない。全ての要因を織り込んだなんて考えるのは時期尚早。

横道に逸れたが、日本ビルファンドはさすがにここから3万円も下がらないだろう。12月から十分に織り込まれていたこと、小ぶりのPOだったことが需給をタイトにしたと思われる。個人の割り当て比率が高いらしいので、売却可能日である22日以降は注目。これくらいの株価変動に収まれば、ファイナンスはまだまだ続きそうな感じがする。

公募増資予定を開示しているジャパンリアルエステイト(JRE)、昨年のPOもこの時期だった産業ファンド(IIF)、三井不動産に売却益を計上するためのフロンティア(1年半ぶり)、同じく1年半ご無沙汰の日本ロジスティクスあたりは上半期動くのかなあ。日本プライムリアルティ(JPR)や東急リートも可能ならやりたいだろうけど、ちょっと株価軟調だから厳しいかも。