日本ロジスティクスファンド投資法人 銘柄紹介

銘柄紹介2回目。

阪急リートの次が日本ロジスティクスファンド。マイナー銘柄が続きます。こんな生き方してるから順張り相場に弱いんだと思います。

さて、日本ロジスティクスファンド投資法人。通称、日ロジ。JLFと標記されることもあります。三井物産がスポンサーで、J-REITでただ一つ物流施設に特化したREITです(グローバルではプロロジスやGLPが桁違いの事業規模で展開しております)。

物流施設と言えば、映画で怪しげなものを取引する場として湾岸の倉庫を思い浮かべる方が多いかもしれませんし、実際、日本にある物流施設の大半は旧態依然の「倉庫」です。

しかし、REITが保有する物流施設となると、どれもこれもメーカーや通販の商品が消費者に届けるための極めて重要な拠点。メーカーが作った大量の商品を消費者に届けるための「入れる」「管理する」「出す」という流れの中核を担う施設です。

しかも、物を運ぶという薄利多売、労働集約型ビジネスの宿命、タイムイズマネーの申し子と言いましょうか、最近の物流施設はとにかく効率化を追求した作りになっております。ほんと、金融機関も少しは見習うべき。何の見当も下調べもないまま会議するとか自己満足でしかないし。

大型化を進めて物流網の単純化し、物の上げ下げを極力減らすため各階にトラックの出入り口を設け、しかも、多品種の商品を扱うために、大人数が働けるように各種設備を整える。最近の物流施設の課題は立地やスペックではなく、バイトを確保できるか、24時間交代で稼働させるために電車の駅から近いかが問われるほど。

企業にとっては、倉庫ではなく工場だと表現すると、REITが保有する物流施設の存在意義、価値の高さが伝わるでしょうか?私も内部に入ったことがありますが、倉庫というよりデパートです。イー・ロジットという会社なんかは、通販会社専用にスタジオ併設の物流施設を作ってるくらいです。そこにモデルさんを待機させ、売りたいものが売れるように写真を撮ってウェブにアップするのがもはや当たり前になっているとか。

NTTや東京ガスのようにと表現するとやや言い過ぎですが、物流施設とはもはや立派な社会インフラです。

デメリットとしては、企業にとって欠かせない施設と言うことで安定した賃料を期待できる一方、物流施設のコストはどこまで行ってもコストです。オフィスや商業施設だと移転することで売上アップが狙えるため、景気が良くなるとテナントが競って良い物件に入りたがるため賃料が上がりますが、物流には期待できない。

あと、一棟にせいぜい4テナントくらいしか入らないため、テナントがどこかに移転すると、次のテナントを見つけるまでに時間がかかり、配当が不安定になることでしょうか。住宅のようにほいほい次のテナントを見つけるわけにはいきません。

では、この日ロジはどんな強みがあるのか、上記のデメリットをどこまで心配する必要があるのか、述べていきます。

一言で表すと、日ロジは物を動かすプロである総合商社がスポンサーの時点で勝ち組に分類されます。

ウェブサイトのアドレスは銘柄コードを文字った「8967.jp」。この時点でどうしようもなく商社っぽいノリですが、さらに社長の名前が藤田レイジ。

漫画好きの方ならニヤリとしてしまうでしょう。ギャラリーフェイクの主人公と同じ名前です。

漫画は藤田玲司で、社長は藤田礼次と字は違いますが、響きがどうしようもなくカッコいい。私が単にギャラリーフェイクが好きなだけもしれませんが、男ならあの漫画に憧れますよね。カニチャーハン。

さて、冗談はさておき、近年こそプロジェクトファイナンスや資源開発で派手で動きが多い商社ですが、彼らが重宝されるのは社会のニーズを掴んでることに加えて、物流の川上から川下までしっかりフォローできるから。お客さん同士を繋げたら用無しになる程度の中途半端なプロではなく、裏も表も知り尽くしているからこそお客さんに信頼される(褒め過ぎかもしれません)。

よって、総合商社がスポンサーというのは、目先の良いお客さんを捕まえてくるだけではなく、将来的な物流業界の移り変わりも捉えられるという意味で安心感があるわけです。オフィスや住宅と違って、狭いマーケットだからこそ、スポンサーの顔の広さは大事です。

海外では超が付く大手のマッコーリーやAMD(今はプロロジスを吸収して、プロロジス名義で展開)でさえ苦戦するのが日本のマーケットです。物流施設以外の面でも付き合えるスポンサーはそれだけ心強い。

そして、日ロジの最大のアドバンテージは物流施設が投資対象として注目される前から、物流施設を買い集めてきたこと。もはや再現不可能なほど物件の利回りが高いです(=安く買っている)。社長も「僕の手柄じゃないけど前任者には感謝です。有難い」と言ったとか言わないとか。

2012年1月期末時点のNOI利回り(現金で実際に入ってくる現金/不動産の簿価と思ってください)は6.8%。悪い例に出して申し訳ないのですが、後発組のMIDリートのNOI利回り4.6%の1.5倍。2.2%もギャップもあります。

配当利回りは結局のところ株価で決まるので、だから何?と言われる方もいらっしゃるかもしれませんが、公募増資のやりやすさ、物件の売却しやすさではJ-REIT随一ですし、何よりもLTV(借入比率)が25%と極めて低い。住宅REITのLTVは60%前後ですし、オフィスは40%~50%。

これだけLTVが低いということは、すなわち、日ロジの保有物件に何があった場合でも借入を増やして物件を取得することで配当金を維持できるということです。

とは言え、ぶっちゃけてしまうと、日ロジに投資する上でLTVの低さを過大に評価するとそれはそれでミスリードになります。上で述べましたが、物流施設はテナント数が少ないので、テナントが退去すると配当金が大きく変動するリスクが大きいのです。そのために常にバッファを残す必要があるのです。

対照的に、住宅REITはテナントが個人なので何千という単位で分散してます。なので、テナントからの賃料がごっそり減ることはあまり考えない。借入比率が高くても問題ない。あと、住宅の投資/運用は参入障壁が低いので、どうしても安い値段で買えないという構造的な問題もありますが。

ちなみに現在の日ロジは取得物件総額が約1500億円/29物件、LTV25%、配当金は17000円~17400円/半年です。目標は取得物件総額3000億円、LTV30%、配当金18000円と明言しております。あと3回くらい公募増資することになると思いますが、特に問題なく達成できるでしょう。

ネックは物流特化型J-REITが日ロジしかないため、セクターとして注目されにくいところです。

産業ファンドも多くの物流施設を保有してますが、近年は設立当初の理念を思い出したかのように、急速にインフラ施設にウェイトを移してますし、ユナイテッド・アーバンやオリックスリートも保有してますがポートフォリオのウェイトは小さいです。

去年か一昨年にラサールが「これからは物流だ」とアピールして回り(当時、既に彼らは物流施設への投資家としては最大でしたが)、三井不動産と三菱地所がこれから物流施設に本腰入れます。大和ハウスや野村不動産も物流大手で、いつJ-REITを立ち上げてもおかしくありません。

しかし、J-REITとしては如何せんこれからです。シンガポールの政府系会社であるGLPはJ-REITの登録は済んでおり、上場も時間の問題ですが、短期的には日ロジには売り材料でしょう(日ロジからGLPに乗り換えるマネーフローは小さくないはず)。でも、そこが買い場。中長期的に物流J-REITが増えることは日ロジにはプラスです。

あと、もう一つの問題点は、物流施設って見に行っても敷地の中にすら入れてもらえないので、物件に愛着持てないんですよね。。。遠目に眺めても四角い箱がデーンと建ってるだけでつまらない。迫力はあるのですが、他のアセットタイプとはそこが決定的に違うんですよねえ。。。

でも良い物を持ってます。

2012/3/5時点で(草加の物件はまだ引渡済んでない)、ポートフォリオの12.2%を占める最大の物件は市川物流センターⅡ。テナントはJR東日本物流とタカラトミー。

その次に大きいのがシェア8.2%の東雲物流センター。こちらは産業ファンドと共同保有です。佐川急便の基幹物件。全然心配いらない物件かと。

あとシェア5%超えるのは船橋、福浦、習志野、大東ですが、いずれも物流立地としては一流です。

テナントの退去も出てますが、しっかり後継テナント見つけてますし、やっぱ力あります。