星野リゾート・リートを買う前にこれ読んでおくように(提案)

原文ママ。なんJ民の先輩を持つinzaiです。こんばんわー。ぶっちゃけリアルに「inzai君!もう次の仕事が待ってるからな!(超笑顔)」とか言われると周りの目がきついです。なんだあの2人テンション高いな、みたいな。ちなみに先輩は特定の球団ファンではないようです。それでなんJ民なのかよと。

そんな素敵な先輩が星野リゾート上場後に私に勧めてきたのが、これ。

星野リゾートの教科書 サービスと利益 両立の法則

星野リゾートに限らずMBAの基本として今でも参考してる本だから是非読んでほしいと。お世話になっててあれですが、遅い。遅すぎるよ。かわいい後輩が横でずっと星野リゾートのバリュエーションしてたやないですか。

ともあれ、私自身はセミナーで何回か星野社長の話を聞いてますが、主に業界全体の話が多く、実は星野リゾートの経営哲学とかほとんど知らなかったので、これ幸いに借りてみました。著者は星野社長ではなく新聞記者から日経BPに転じた人なんで中身は日経ビジネスの星野リゾート特集みたいな感じ。インタビュー多め。

一言で表すと、米の名門コーネル大学ホテル経営大学院の出身であり、色んな旅館、リゾートを再生してきた星野社長がそれぞれのケースでどんなことを考えて、どんな理論を当てはめて成功してきたのか、それを参考にした専門書とともに紹介している本。

事例を紹介していると言っても狭く深くではなく広く浅くで数字とかほとんど出てこないのですが、この中ではまず最初に星野リゾート・リートが保有している界 出雲と界 松本が事例として紹介されている時点でテンション上がります。

当たり前ですがIPO目論見書の記載内容は現状だけであって、各旅館のこれまでの経緯なんて触れられていません。どういって背景で経営が苦しくなって星野リゾートの支援を仰いだのか、そして星野リゾートが何をテコ入れして黒字旅館となったのか。

そこって不動産の本質的な価値であり、現在の業績が見せかけなのか本物なのか、好調ならいつまで続くのか、不調なら業績の回復は可能なのか、どうやってそれを見極めるのか。それくらいのシナリオは自分で作らないと話にならないと思いますが、星野リゾートって数多ある不動産とは全く別物なので何に着目すべきか良く分からない点も多いのです。

この本ではそういう痒いところが紹介されてます。経営方針が迷走していた出雲はハード面でのテコ入れ、経営方針は定まっていたものの従業員の下の方までブレイクダウンできてなかった松本はソフト面で星野リゾートの流儀を導入。前者はともかく後者は業界標準とは全然違う手法なので星野リゾートじゃなかったら上手くいかなかったのかなと。

事例と言っても想定外のトラブルなんて起きてないのですが、先入観を持たず当り前のことを当たり前に対処する。事業再生ってそういうもんであり、人間関係やエゴが入るからややこしくなる。そういうところをトップダウンで「整える」ことができるのが星野リゾートの強みなのかなと。

他の事例として、REIT以外の物件では北海道のトマム、福島のアルツ磐梯。ビジネスでは星野リゾートが経営している地ビール(たぶん)最大手のよなよなエールが紹介されてますが、各事業体について存続に関わるような本質的なことを書いているのは旅館2つだけで、他の事例は各論的に紹介されているだけです。

2/3は事例紹介、1/3は本の紹介で、名著マイケル・ポーターの競争の戦略、ピーター・ドラッガーのイノベーターの条件、グロービスの教科書なんかも入ってます。大半がブランディング、マーケティング分野の書籍で私がほとんど触れてない部分なので、その辺は有名どころが紹介されているのか分りませんが、一つ二つは読んでみようかなと。星野リゾート2代目社長の本もありました。

私もそうですが普通はMBAとか持っててもそこで学んだロジックを使うことってほとんどありませんし、専門用語を使おうものなら机上の理論として同意もされません、とみんな言います。もちろんまったく使ってないわけでなく、あたかもボトムアップで考えましたみたいな顔で実は机上の理論そのままだったりするのがフル活用できるかどうかの分かれ目なんですが、星野リゾートの場合はワンマン経営であること、そして前例のない世界で挑戦していることから理論武装のみならず精神的な支柱としてもこれらの本を参考にしているようです。

そういう社長が経営する星野リゾートを盲目的に信用してもいいか、海外展開とか本当に大丈夫か、星野リゾートがつぶれることがあったら星野リゾートブランドに頼っている星野リゾート・リートも一発でアウトだと思います。そのリスクをどこまで織り込むか。

とりあえずこの本を立ち読みしてから星野リゾート・リートを買っても遅くありません。あの時価総額じゃやっぱり株価動かないですし。

なお、大事なことですが、この本は立ち読みで十分です。1500円の価値はありません。読書習慣ある方なら30分で読み終わることができます。図書館で借りて書籍一覧だけ写メ取れば十分かと。私、内容の薄い本(あの薄い本じゃないですよ!もう祭りまで1カ月切りましたね!)が乱発される事態が今の読書しない日本人を生み出したと思ってる人間なんでそこら辺はとても厳しいつもりでございます。

アマゾンで買っていただけるなら大半有りがたいことですが、別の本を買った方がタメになると思います。