さくら総合リートの紹介

平成最後の更新がさくら総合で良いのか。inzaiです、こんにちわ。年号の切り替えに思い入れはないけど、決定までのストーリーを知ると日本語ってほんと面白いよなと思います。先祖代々が積み上げてきたものを調べるだけで知的好奇心が満たされるってほんと楽しい国だし、歩けば歴史的遺産に当たる東京ってほんと恵まれている。

さて、4月26日付のJ-REIT分析ではサラッと流した3473さくら総合リートをもう少し掘り下げます。

まず、リート名からだとスポンサーが誰なのかさっぱり分かりませんが、ここのスポンサーはオーストラリアのファンド運用会社であるGalileoと東証一部上場の日本管財が50%ずつ(議決権は100%Galileoが保有)。

元々は両社が2006年にオーストラリアに上場させた日本特化型ファンドであるJapan Property Trustが母体で、Galileoが運用する他のファンド(米国商業リート)が上手く行かず売却するなどバタバタしている間に、リーマンショックが来て何もできないまま時間だけが経過し、2016年にオーストラリアでの非上場化とJ-REITとしての再出発を決定。2008年から2016年の間、物件売買はゼロという無作為ぶり。そういう意味ではJapan Property Trustが「母体」というかそのままオーストラリアから日本にスライドしてきたことになります。非上場化の過程でも、当初は株価が安すぎて色々難航してた気がしますが(株価を引き上げた皺寄せは全部さくら総合の投資口価格に反映されました)、もう資料が残ってないので正確なところは忘れてしまいました。

なお、上述のGalileoが運用していた米国商業リートはCentro Properties(今のVicinity)に売却された後、リーマンショックのクレジットクランチでブラックストーンに売却。リーマンショック前のオーストラリア勢の海外展開ぶりは凄かったですが、すっかり成りを潜めてしまっており、Vicinity含めて全員がNZ以外は海外展開しないって言うのでほんとトラウマなんでしょうね。最近はアジア勢の海外展開が激しいですが今後どうなることやら。

そんなこんなで今のGalileoはオーストラリアで住宅開発を手掛けるのみで日本事業はおろかファンドマネジメント事業さえやってない会社です。

一方、日本管財はそれほど有名ではないかもしれませんが、東証一部時価総額800億円強でビルメン、PM業を中心に不動産の全分野に進出しているプレーヤー。地味なイメージとは異なりオーストラリアのマンション管理事業は業界No.1でマーケットシェアを持ってます。かなり昔からオーストラリアに進出しておりその縁でGalileoと日本特化型ファンドを手掛けることになったとか。なお、日本管財のアセットマネジメントビジネスは東京キャピタルマネジメント(TCM)名義でリートの運用会社に出資しているのもTCMです。

なので、このリートは、金主はファンド事業もやってないGalileo、その他雑務は日本管財というフォーメーション。この時点でかなりアレな感じです。

ポートフォリオは18物件。総じて立地も築年も厳しいです。オフィスはオフィスエリアにはありますがエリアの端の物件が多く平均築年数は30年弱。稼働率ほぼ100%とアップサイドも限定的。商業はローカルの大型が占めており、人口動態は元より、ロードサイドの競合出店で状況が変わるような危うさ。例えば、岸和田のラパークは周辺一帯が一戸建てメインで人口密集度が低い上、大阪人の心の故郷とも言える岸和田競輪場に面しており、そこの展開次第。最近の大阪は、主要駅の駅前開発が進んでおり、都心に近い人気エリアの駅前マンションに人が集まる傾向があり、そんな中で一戸建て中心の岸和田が人気エリアになる日は遠そう。そもそも岸和田と言えばだんじり祭りのイメージをお持ちの方が多いでしょうけど、そのまんまの雰囲気です。住みたい街になる日は遠い。学生時代からラパークの餃子の王将に通ってた私が言うのですから間違いありません。他の商業も似た感じだと思われ。住宅はトーセイ並み。J-REIT初の工場は良く分かりません。テナント代替性は低そうですがなんとなく大丈夫そう。要はアップサイドが期待できないポートフォリオですよ、と。

そんな将来性が低く物件取得のトラックレコードも皆無な彼らが注目を浴びたのが2018年6月。複数の大規模物件から成るポートフォリオを取得するぜ!札幌の商業施設の売却代金もそれに充当するぜ!とびっくりコミットメント。そんなこと言ってる暇あれば取得のリリースを出せば良いのに、という投資家もいたとかいないとか噂がありますが、8月にさらにびっくりニュースで、やっぱり物件取得できないわ、札幌の売却益は分配するね、めんごとプレスリリースを発表。前代未聞。なにこれ、こんな自由なプレスリリースありなの?物件取得できそうって言ったけど物件名も業績のインパクト開示してないからセーフなの?フォワードコミットメントしてなかったのはある意味で幸い(フォワコミしてないから買えなかったのかもしれませんが)ですが、流れてしまった物件はあのリートが買ったらしい、とか、やはりLTVを無茶しようとしたんじゃないかとか(それ以外で流れる理由ないし)、そういうことを総合的に勘案すると、あの程度の物件を買う段取りもできないリートってのはちょっとしんどいなと。

あと自分のポートフォリオに運用会社が入居しているリートは基本的に信頼してません。

そんなさくら総合ですが、日本管財はまじめな人々なんでガリレオがいなくなれば化けるかもしれないし、ちゃんとバリュエーションさえ見ればそこまで怖くもないので私は嫌いではありません。