利回り4パー教の応用講座 八正道の正見 そもそもJ-REITとは何か

基本講座で述べたように利回り4パー教は東証REIT指数の利回りは最終的に4%に収斂することを真理とし、その涅槃に辿り着くための教えです。

ですが、キリスト教やイスラム教のように唯一神の言葉を集めた聖典があり、神により唯一の歩み方が命令されている天啓宗教とは性質が異なります。

利回り4パー教には万人に示された歩みはなく、今現在、形成されている自分に合った方法やペースで東証REIT指数の利回りが4%に収斂することを信じ切る自己を回復することになります(仏教用語で自己の回復である涅槃への歩みを中道と言います)。

厳しい歩みが合ってる人には厳しい歩みが中道となり、緩やかな歩みが合ってる人には緩やかな歩みが中道となります。

とは言え、己だけで涅槃に向かうのは不可能です。

中道は八正道として教え導かれます。そこで今回は正道の第一歩としてJ-REITとは何ぞやという点を述べます、仏教用語では正道の実践徳目は8つに分けられ(八正道)、今回は正見ということになります。

★J-REITの本質(仏教用語でアートマンと言います)について

利回り4パー教において、J-REITとは巨大な素人大家です。

勘違いされそうですが、素人と言うのは無知や未熟という意味ではありません。シロ、すなわち潔癖や他利的な存在であることを意味します。

分かりやすく比較から入ると、対義語の玄人はクロ、すなわち貪欲や傲慢を意味し、ステークホルダーの幸せなぞ省みずひたすら短期の利益を求めて地上げや開発といった回転ビジネスに注力する言わばデベロッパーを指します。

それに対しJ-REITはシロ。利回り4パー教において、J-REITはステークホルダー全員を幸せにする利回り4パー教の根本かつ絶対的な存在なのです。

何を聞いてるか分からなくなってきましたか?ご心配なく。私も何が何だか分からなくなってきて悟りが開けそうです。

もうちょっと掘り下げましょう。

この文章を読んでいる方は、J-REITが不動産賃貸事業に特化した会社であり、それゆえ収益基盤が安定していることはご存知かと思います。

しかし、それは表面的な理解です。厳密に言えば、J-REITは一定割合の賃貸不動産を保有していればよく、また賃貸不動産以外の事業を営むことは可能です。スターアジアはメザニンローンに投資してますし、海外REITは不動産開発のみならず、利益の60%は導管性の対象事業だが、残り40%は法人税を払っているケースもあります。

にも拘わらずほとんどのJ-REITが賃貸不動産事業に特化している理由は、J-REITが世界でもトップクラスに情報開示が進んでおり、その透明性の評価をさらに絶大なものにすべく分かりやすい事業だけに取り組んでいるからです。行いからしてアートマンとサンスカーラのズレが少ないと言えばより伝わりやすいでしょうか(日本の場合、J-REITの情報開示が世界トップクラスでも不動産マーケットの透明性がクソなので役に立たないと外国人から言われることもありますが、中にいる人からすれば大した話ではないので聞き流しましょう)。

事業法人とは異なり、あるがままの姿を見ても投資家が誤りにくい。これが利回り4パー教の正道の入り口であり、J-REIT分析の第一歩となります。

★J-REITをどう見るか

東証REIT指数は個別銘柄の総体です。森を知らず木を見るのは愚の骨頂ですが、木を知らず森を見るのもまた愚かな行いです。正道は一にも二にも個別銘柄の分析から始まります。

そしてJ-REITを分析する上でスポンサーと物件が大事というのはよく言われます。

しかし、スポンサーが大手だから必ずしも良いと言うわけではありませんし、事業用不動産に詳しくない人が物件見ても何も分かりません。あー、なんとなく立派な物件だなと言うのは分かっても、テナントの歴史的経緯、マーケットの賃料水準、そういったものを分からない人からすると、半端な知識は火傷のもとです。

誤解を恐れずに言い切ります。

J-REITの分析の上でもっとも重要なのは雰囲気です。

スポンサー、物件、PL、BSと言ったあらゆる要素で構成されるそのREIT(いわばこれがREITのアートマンとなります)から暖かな雰囲気を感じることができるかどうか。これがもっとも重要な要素です。

あるべきアートマンとサンスカーラに負の歪が生まれていれば、そのREITによって良くないことが起こります。反対に、正の歪が確認される場合は、そのREITにとって良いことが起こります。

具体例を出しましょう。

あるJ-REITの主力物件からテナントが退去することになりました。これがREITにとっていい話なのか悪い話かはこの情報だけでは分かりません。テナントが高い賃料を払っていれば悪い話かもしれませんが、賃料が低いならば良い話かもしれません。しかし、賃料が低くても後継テナントを探すのが難しい物件であれば悪い話に転じます。また、テナントが高い賃料を払っていてもそのことが投資口価格のストレスとなっていれば退去は良い話です。一つのテナントから連想できる影響は多岐に渡ります。それを全て織り込まないとREITへの影響は分かりません。これを見極めることを正見と言います。

また、REITにとってスポンサーが重要と言うのは事実です。REITに関与する社員の大半が出向者であるどころか、スポンサー内にREITの実質的な本部が存在することもあります。しかし、スポンサーがREITに好意的かどうかは時期によります。WIN-WINであることも、WIN-LOSEであることもLOSE-LOSEなこともあります。スポンサーはそんなにやる気ないのに市況が良かったばかりに上手く行ってるように見えることもあります。例えば三井不動産がスポンサーの住宅REITである日本アコモデーションファンドの船出は散々でした。修繕費を食う大規模物件に築浅割高ポートフォリオ。時間が解消してくれましたが、今のように高い評価を得るようになるまで10年の時間を要しました。同じ三井不動産がスポンサーの商業REIT、フロンティアはコメント不要ですね。頑張っているように見えますが、スポンサーはオンバランスの商業施設を優先しあくまで総体で運用しているようにしか見えずREITの投資家にとってはストレスが溜まります。三井不動産ロジ、これも船出はまちまちでしたが今ではJ-REIT随一の優良銘柄です。追い風に恵まれた感じはあり、いつまでも低いエクイティコストをエンジョイできるかは分かりません。日本プロロジスのように頭打ちになる日は来ると思います。しかし、それは当面先の話かもしれません。

利回り4パー教では、全銘柄のアートマンとサンスカーラの歪を判断し、総体として収斂すべき4%を見極めることを生涯の修行とします。

気の遠くなる積み重ねが必要と思われるかもしれませんが、涅槃から見る東証REIT指数の値動きはプロ野球選手がゾーンに入った時に言う「ボールが止まって見える」と同じ感覚だそうです。目指してみる価値はありませんか?

なお、利回り4パー教における八正道その4である正業では、認識した生の歪の修正に関与します。詳細は後日となりますが、正見を習得した結果が正業に繋がることは容易に想像できるかと思います。