何か思いのほか長くなりそうなので、まず結論というか個人的な考えを書こうと思う。一言で表せば「短期的には上がるので叩き売れ!上手くいってもどうせ公募増資するんだから深追いするな!」に尽きる。
以下、詳細。
①J-REITの自社株買いのアナウンス効果はそれなりに期待できる。マーケットが負ののれんのメリットを理解するのに恐ろしく時間が必要だったが、自社株買いは直感的に分りやすい。どのような形で織り込みにいくかはその時々の市況だが、短期的に10%くらいは上昇すると思う。
②自社株買いの原資は、物件売却資金と減価償却費がまず想定される。但し、物件売却で発生する譲渡損益は配当金を直撃する。ひょっとしたら自社株買いと譲渡益の内部留保は同時に認められるかもしれない。譲渡損を出すしかない場合はどうするのか、減資差益でも計上するのかしらん。でも、自社株買い→減資差益計上→物件売却→売却損発生→減資差益と売却損を相殺の順番になるだろうし、半年決算では同時にやるの難しそうだなあ。また、物件売却資金が負債返済に回されないと借入比率も上昇してしまう。
一方、減価償却費は毎期発生するので自社株買いの減資としては分りやすい。例えば大和証券オフィス(DAO)だと時価総額641億円に対し、直近の減価償却費用は半年で13.5億円。すべて使えば半年で2%の自社株買いに該当する。これは出来高の薄いDAOの場合、一カ月分の出来高と同じ金額となる。
③重要なのは物件売却も減価償却費の充当も将来のCFを取り崩しているのと同義だということ。物件売却により賃貸収益は減少するので、当たり前だが一口あたりの配当原資も減少する。また、減価償却費は本来であれば資本的支出として物件のバリューアップや負債の返済に充当されるものであり、長い目で見れば重要な配当原資である。
④よって、自社株買いが一口あたりの配当金/純資産を増加させるかはケースバイケース。ベストシナリオはCF水準をなるべく維持したまま自社株買いして、投資口価格を上昇させて、その水準で公募増資して、良い物件を買って「質の良い」配当金を生み出すこと。
⑤最悪のシナリオはスポンサーに第三者割当増資→自社株買い。これは既存投資主の希薄化のあとに行われるので既存投資主にはメリットゼロ。これだったらTOBしてくれと思う。
個人的にはアメリカやオーストラリアのREITのように開発してほしい。デベロッパーは嫌がるだろうけど。NBFあたりがMBOすれば面白い。