性格がねじ曲がってるせいか、「これ書こう!」と思ったことほど記憶から消えていく。
1月28日(土)の日経朝刊に「REIT資金調達多様化、金融庁検討、株主割当増資など解禁」とタイムリーな記事があったのに、どうして週末のブログに積水ハウスSIリートの物件取得を選んでしまったのか。
ちなみに整理しておくと、1月28日の日経記事は、金融庁がJ-REITのファイナンス手法としてCB(転換社債)、ライツイシュー(株主割当増資)を認め、インサイダー取引規制やスポンサーから独立した経営を担保する制度を導入する方向で動いていることを報道している。
最初の3点は投資法人だけ認めてなかったものを認めるという意味で可もなく不可もなく、最後のは実効性あれば外国人が評価するかもしれんが、まあ委員会制度と同じで形だけの導入になる程度かなあ。
あれ?この記事は自社株買いについてはまったくノーコメント!?
だからマーケットは小動きだったのかしらん。
というわけで、1月17日の日経記事を紹介した第1回自社株買いは効果あるのか?、日経さんの記事のどこが中途半端なのか触れた第2回自社株買いは効果あるのか?②、長いシリーズになりそうなので結論だけ書いた回【先に結論だけ書きます】J-REITの自社株買いは効果あるのか?と来て、ようやく第3回「J-REIT自社株買いのアナウンス効果は期待できる」。
J-REITは投信法による自社株買い制度が認められていない(詳しくはいずれ述べます)。
一方で上場企業は自社株買いが広く認められており、自社株買い常連銘柄なんて言葉もあるが、元々はJ-REIT同様に禁止されていた。
明治時代に商法が制定されて以来、株式市場は公に資金調達を行う場であり、安易に会社側が自分の株価を調整することは絶対悪。
アングラマネーと経営陣が引き起こす事件も多かったことから、会社は金儲けのための器という偏見も強く残っており、極端な性悪説に基づいて会社法が作られていた。
私の大学時代には真剣に「自社株買いを認めることは法の精神に背かないのか」なんてゼミで議論してましたもの。「メリットの方が大きそうだし、悪いことしたら捕まえたら良いんじゃね?」と発言して「おまえはなにも分ってない。議論するのはそこじゃないんだ」と諭された記憶がある(確かに法の考えを理解してなかったと反省している)。
それが今や「会社は自分のことを一番分っている。収益の見込みないものに投資するくらいなら自社株買いしろ!」という時代。
これは会社が社会的な存在として厳しく外部の目にさらされ、情報開示を積極的に行うようになったという面もあるが(それでもオリンパスのような事例はあるわけだが)、何よりもお金の価値が薄くなった影響も大きいのかなと思う。
数少ない資金を慎重に投下するのではなく、大きく効率的にお金を動かしてなんぼという考えが広く浸透した結果、ビジネスをじっくり育てるのではなく、追い掛ける姿勢が評価されるようになったのかな。
何にせよ、そういった様々な歴史的変遷により、自社株買いは一つのファイナンス手法として認められるようになった。
学術面からみると自社株買いがすぐに効果があるとは考えられていないが(この記事が分りやすい)、実務の面からは自社株買いは「?」というものでもとりあえず株価を引き上げる。
最近だとMonotoraoが典型例かもしれないが、自社株買いするくらいなら設備投資したら?と思うような成長企業でもまずポジティブサプライズになる。
アカデミックな世界でもやむなく、この現象を「アナウンスメント効果」すなわち経営者が安いと思ったからこそ自社株買いするわけで、投資家もそれに引っ張られるという苦しい言い訳を作るほど効果覿面な手法である。
このような環境下でJ-REITの自己投資口買いが反応しないわけがない。
J-REITの資産は不動産そのものであり、それを時価よりも安く買い戻そうとしているわけだからとても分りやすい。アナウンスメント効果がかなり大きい。
しかも、利益を全て配当している以上、不動産の資産総額はそのままで発行済投資口数が減るのだから、一口当たりの配当金も増える。バリュエーション面だけでなく、投資家のCFが増える。投資家は損することがなにもないように見える。
よって、J-REITの自社株買いはアナウンスメント効果に加えて配当という目に見える効果が上乗せされる(上方修正するほどじゃないにしても)ことから、ポジティブサプライズが期待できる。
10%くらい上昇幅と言うのは感覚的なものだけど、それくらいのインパクトはあるんじゃないかな。
その後の株価は、自社株買いで失ったもの次第。というわけで続きます。次は自社株買いの原資は何か?