アブラハム・プライベートバンクとJ-REITのないようであるような関係

雨で暇を持て余しているinzaiです、おはようございます。昨日は胃腸炎一歩手前で自宅のエレベーターで吐きそうになってました。ストレスは概ね解消されてきたものの、身体は本調子ではないようです。今週はお祭り騒ぎ的な飲み会が2回あったからしょうがいないにしても、絶好調だった夏に比べると最近は運動もさぼってますしそういうところもあるんでしょうね。

さてさて。

アブラハム・プライベートバンクと言えば、「いつかはゆかし」という自分年金積立サービスで知ってる人も多いと思います。Yahooでもしょっちゅうバナー出てきてましたね。利回り10%の投資商品を通じて老後資金1億円を目指す例のアレです。

その会社に証券取引等監視委員会から行政処分を行うよう勧告処分が出ています
。3つの金融商品取引法違反があったとのこと。

まず、「助言業」と「金融商品の販売」での利益相反。要は投資家側に助言するプロとして手数料をもらってファンドを紹介してたはずなのに、ファンドからも間接的に手数料をもらっていたということ(SECがそう判断した)。昔からよくあるネタですし、ちゃんとその旨を明示しておけば問題ないのに助言業という気軽な形態でやろうとしたため、それはダメですよーとSECから言われてしまいました。

次に、事実に相違するおよび誤認させるような広告を行っていたこと。広告に記載していた高い利回り商品の取得実績がなかったり(投資家の選択肢としては可能だったようです。いまは新規資金受入は停止とか言って類似のファンドに誘導でもしてんだろうか)、広告における他社との商品比較の際に自社に有利になるような商品を恣意的に選んでいたり(というSECの判断。第三者によるリサーチにしおけば良かった、のかな?)、最初の指摘の裏表なんですが、実質的にファンドから手数料をもらってるのにもらってないと広告してしまったり(これも判断基準の見解相違)。

最後に、運用成果が悪かったことから2年分の助言報酬を全額削減した、要は禁止されてる損失補てんをしてしまったということでしょうか。

ふう、この手の話に触れるときは神経使います(書いてから思いましたがリンク張るだけにしとけばよかった)

何にせよ、その3つの点で証券取引等監視委員会が総理大臣、金融庁長官に処分勧告を出しました。勧告イコール絶対に処分されるわけではありませんし、アブラハム側にはまだ自分の意見を主張する機会ありますが、現状ではこんな感じ。

これに対しアブラハムはHPでコメント
を出しており、「弊社お客様の資産に関しては、AIJ事件やMRI事件とは異なり、海外金融機関にて健全に運用されております」とのことです。なのです。アブラハムが投資助言したファンドの詳細は分かりませんが、顧客から損失補てんを迫られたほどのパフォーマンスであっても健全に運用してたことにはなりますのでそこのコメントに嘘はないでしょう。

野村證券も損失を被ったバーナード・マドフ事件 アメリカ巨大金融詐欺の全容
(かなり詳細にマドフファンドの運営実態が書かれた本です)のような悪質な事件と、健全に頑張ってパフォーマンスが振るわないファンドの違いなんてお金が目減りするという意味で投資家には関係ありませんけどね。

これ以上のアブラハムに関するコメントは、紹介したファンドの信託報酬や各種手数料の数字を見ないとなんとも分かりません。ファンドの情報開示レベルなんて任意ですし、アブラハムが定めた基準に合致してれば契約としては何ら問題ありません。J-REITだって年間20%下がったりしますし、努力が必ずしも報われるわけではないのがマーケット。

で本題ですが、2010年に日銀が取得を始めて以来、地銀などの国内金融機関の投資家数が増えているJ-REITと海外ファンドの認知度向上ってのは実は深い関係があると個人的には思ってます。

そもアブラハムのように優良なリターンを獲得できるファンドだけに投資するってのは誰しもが思うことで、そのためのゲートキーパーとか、ファンドオブヘッジファンドとか、ヘッジファンドのインデックスを参照している会社とか(インデックスのためには膨大なファンドデータが必要)世の中には沢山あります。

株式投資の場合は証券会社に発注しますし、債券やデリバであってもヘッジファンドの大半は金融機関が用意しているパッケージを使ってます(レバレッジや決済のサービスを使うため)。

そんな中で埋もれているファンドってのはほとんどあり得ません。

CMBSの逆張りで儲けたウォール街を出し抜いたジョン・ポールソン
(ポールソンが如何にマグレで稼いだかがよくわかる)のように発掘されようもんなら膨大な投資資金が入ってきて、ひどいパフォーマンスで四苦八苦してますし、パフォーマンスが良好でも如何せん個人の能力に頼るところがある間は波が大きいです(ハングリー精神がなくなる説を推したい)。証券会社だって残高増えれば手数料が潤うので積極的にファンドを紹介します(これくらいはパッケージに含まれているもん)

プライベートエクイティファンドだと水面下に埋もれ、とりあえず小口資金からというケースもあるかもしれませんが、出入りの激しい小口資金なんてなるべく避けたいでしょうし、信用を得るために情報開示だってしっかり行う(大袈裟になる点は注意)。

日本酒ファンドなどを運営するミュージックセキュリティーズは最初から小口に特化したファンド運用会社で私自身は酔狂で投資してるつもりですが、ぶっちゃけ手数料高すぎると思います。100%趣味もしくは社会的意義を感じない限りは投資できません。でも逆にいえば会社としては健全なわけです。心配なのはひふみ投信。日本の顧客軽視の運用業界に喝をいれるべくぜひ頑張って残高増やしてほしい。

そんなわけで、どの金融機関であれ、リーマンショックの引き金となったCMBS(およびその派生商品)とか絶対リターンを標榜するファンドとか、仕組債とかで「美味しい話はないなあ」と思ってるのに加えて、過去の経験からファンドに投資する場合はかなり詳細なデューディリジェンスチェックが必要になるなど「面倒くさい」ことになってる、そして「やっぱ一任ファンドって不透明すぎてリスクコントロールできねえなあ」という状況。

そういうのもあってどんな不動産を保有しているのか一目瞭然(それをうまく運用できているかはまた別の話)のJ-REITは決して美味しい話ではありませんし、それだけで十分てなもんでもありませんが、運用資産の一つとして保有しやすいのかなあ、なんて思っております。やる気さえあれば毎日でもモニタリングできますしね。願わくばずっと長期保有してほしいなあ。