大和のストラテジック・リート・ファンド-予想分配金提示型-が気になります!

アライアンス・バーンスタインがモデル組んで、表面的には明示安田AMに運用委託するこれ

最大の特徴はマーケット環境に応じて米国リートの優先株式を25%~75%のウェイトで保有することで高い配当利回りと低い基準価額のボラティリティを狙うこと。ウェイトの残りは、いわゆる海外REIT投信と同じで米国を中心としたREITで運用するようです。

優先株式というのは債券と株式の中間の性質を持つもので、簡単に言ってしまえば、株主の権利が色々と制約されるものの、配当金の安定といういう意味では普通株式よりも優遇されている株式です。

配当金は比較的高い利率(もちろん額面に対して)で固定されており、普通株式の配当金が少なくなっても優先株式の約束された配当金は満額出ます。仮にREITが経営破たんした場合でも、債権者には劣後しますが、普通株主よりは優遇されます(と言っても、投信で保有される方は破綻した場合の財産分与には興味ないと思いますが)。

一方でデメリットは、REIT側が任意に償還できる(機関投資家にとっては期間収益を固めらないのはちょっと厄介。額面以上で買ったものが額面で償還されたら目も当てられません)、REITの収益成長の恩恵を受けられない(優先株式の配当金は固定)、時価総額が小さい(発行しているREITにおける資本構成で10%は超えてない。そういうルールがあったような気もしますが、ちと記憶が曖昧です)といったところでしょうか。

個人的には、償還期限のない債券という意味でREIT側にメリットがある一方、投資家側にはあまりメリットが感じられない商品だと思っております。利回りが高いと言っても、あまりに市場から乖離するようだと償還されてしまうわけですし。

なお、利率は優良REITでも6%くらいあり、インデックスで言えば普通株式の利回り3.5%に対して優先株式の利回りは6.9%とほぼ2倍です。時価総額は35兆円に対して1.8兆円。

上限2100億円投信が設定されるくらいですから当然セカンダリー市場もあり、ボラティリティは相場上昇時も下落時もざっくり半分くらいのイメージです。と言っても1.8兆円しかないマーケットで最大1575億円(2100億円×75%)も保有するのはちと厳しい。

優先株式はなんでこんなに利回りが高いの?と不思議に思ってらっしゃる方も多いと思いますが、米国株式は恒常的に株式利回りよりも債券利回りの方がかなり高い状態が続いていることが背景にあります。

今でこそ日米の金利差はぺしゃんこでそのギャップも縮まってますが、リーマンショック前まではベース金利の差もあり(いわゆるFXでスワップポイントが発生する要因でもあります)、ざっくりUSリートは6%の金利負担をしつつ、株式の配当利回りは4%に留まっている状況が普通でした。

そういう環境下で、REIT側からすると実質的に償還期限のない債券である優先株式を発行しようと思うと利率は株式よりも債券の水準に近づくわけで(プレミアム載せて6%~8%以上)このような状態が生まれたわけです。

なので足元ではサイモンは当時の高い利率の社債、優先株式を償還・乗換しておりますし、他のREITも高い利率のものは償還して、優先株式を発行するとしても今の利率のものに留まるのが中期的なトレンドと思います。FRBが利上げモードに入りそうな2015年が近づくとより加速する可能性が高いです。

ただ、懐が広いのがアメリカの良いところで、中位以下のREITは依然として高い利率を払ってますし、本記事の投信も上位保有銘柄は優良REITの普通株式ですが、5位以下はそういった優先株式が占めるようです。

この金利環境下でも楽にならないREITのウェイトが増やすのは、疑似タコ足配当よりはマシですが、オプションのプレミアムに比べるとどちらが健全なんでしょうか。いずれにせよ私の頭の中には、相場が大きく下落した時は手を出してみたい投信として記憶されることになりそうです。手数料と信託報酬合わせて初年度に手数料5%抜かれるのが痛い。。

ちなみに伊藤園が発行してる優先株式は償還がないようです(ネットで検索した程度ですが)。こちらも配当金が上乗せされているタイプですが日本では人気ありません。伊藤園としてもセカンダリーでは優先株式よりも普通株式を買ってもらって値を上げて欲しいところでしょうから特に問題はないんでしょうけどちょっとさびしいです(優先株を保有している人間としては早く値が上がって欲しい)。